まだ見ぬ青を求めて(2025秋田/青森紀行: 8)

西洋の有名画家の特別展ならともかく、そうでないときの美術館なら土日でも大して混んでないだろうと思って青森県立美術館に行くのを土曜に回したのだが、青森県立美術館に行くバスは三内丸山遺跡に行くバスと同じで、これは混むだろうなと思ってバス乗り場に行ったらやっぱり混んでいる。まあ仕方がないかと思っていたらバスの乗客のほとんどが美術館のほうで降りた。人の流れと言うものはよくわからない。

青森県立美術館にはバレエ『アレコ』の背景画がある。全4幕のうち3幕の背景画を持っているのだが、残りの1幕も期間限定でフィラデルフィア美術館から借りていて、全4幕がそろっている。だから青森県立美術館に来た理由はこの『アレコ』にあったと正直に書いておかなければならない。

展覧会を調べると佐野ぬいという画家の展覧会をやっていた。佐野ぬい、という画家を寡聞にして存じ上げなかったが、調べると諸国銘菓売り場でおなじみラグノオささきの創業家に生まれ、女子美大の学長まで務めた人であるという。作風は青色を基調にした抽象画ということらしく、面白そうだったので観に行くことにした。

佐伯祐三の画集に衝撃を受けたというこの画家は、クレーのような画面分割、松本竣介のような青色から始まり、やがてより鮮やかな青を基調にした抽象画へと作風を移していく。
キュビスム展や抽象画展でクレーやドローネー、レジェやメッツァンジェを見て「これが全部青色だったらよかったのになあ」と思っていたのだが、その理想の形がここにあった。しかし、色の塗り分けの線はぼやけ、オブジェクトは不定形、塗った面には筆跡がはっきりと残っている。オルフェウス派やピュリズムの作品をだいぶ溶かした感じである。でも戦後のオールオーバーには行かず、戦前の抽象画の世界から独自の世界を、それも青を中心に切り開いていったのだと思う。不定形でぼやけた色彩面が深い紺色で塗られていれば不安のようなもの、淡く浅く塗られていれば爽やかさや切なさのようなものを。そして最後の公開作『セルリアンブルーの街』の方形の物体の筆跡からはどこか生命の執着のようなものを感じた。青には可能性がある。そしてまだ知らない青の可能性がきっとある。

14時すぎのバスで帰らないといけないので常設展を見る時間が無くなった。奈良美智棟方志功だけ見た。もうひとつ見たかった『あおもり犬』はいったん外に出て階段を上り下りした先の、だいぶ面倒くさいところにあった。