「かもしれない」買い

「架空鉄道」で調べてもらえばわかると思うのだけど、鉄道ファンにも鉄道路線や鉄道会社を妄想して作るというジャンルが確かに存在する。私も鉄道路線を空想する、ということは昔も今も好きなのだが、実在の世界に架空の路線を作る、というのは不思議と昔から興味がなくて、いつも架空の土地を架空の列車が走っていた。

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大人になってからはそれを模型で具現化しようと思うようになった。鉄道模型の小さいレイアウトを作るのに半年もかけて設定のほうを作っていたのは自分でも阿呆らしいと思ったけど*1、それはそれで楽しい行為ではあった。

トミーテックから出ている「鉄道コレクション」というのは車体自体が廉価で、比較的小型の地方私鉄の車両が多く、まさに自分が妄想しがちな鉄道路線に走りがちな車両が多くラインナップされているので昔からよくお世話になっている。前述のレイアウトを作った時も基本的に車両はすべてこの鉄道コレクションで揃えた。

この「鉄道コレクション」の別シリーズに「ノスタルジック鉄道コレクション」というものが最近始まって、これも少しずつ買っている。鉄道模型界隈の恐ろしいところは「初回限定生産」が基本であり、数年後に「これが自分の妄想にぴったりなやつ!」と思ったところで模型屋には既に売られていない、ということが殆どだということである。それなので、「いつか使えるかもしれない」という「かもしれない買い」をしなければいけないのが結構恐ろしい*2

このシリーズは架空の小規模鉄道会社という設定の車両しか基本的に出ない、というのが実在再現主義というべき思想が主流を占める*3鉄道模型業界では異色の存在である。そのコンセプト自体に賛否がすでにあるのだが、私はこの大まかな方向性は嫌いではない。

ただ、問題は全長10m前後の2軸車(車輪が2つしかない車両)しか基本的に出ていないことで、これが妄想をしづらくしている。それが大正製の木造の電車ならまだしも*4、明らかに「創業時の木造電車を車体更新しました」みたいな見た目をしている第3弾の青い電車なんかは、買ったはいいものの「車体更新したときになんで一緒にボギー台車*5化しなかったのか?」という説明が、未だにうまく頭のなかでできていない。創作物として表に見せる分には「どういう理由かは知らないがそういう電車が走っている」と書けばそれで済む話なのだけど。

*1:ちなみにレイアウトの方は2ヶ月足らずで作り終わった。

*2:そのため、鉄道模型で鉄道会社を空想する場合、「かもしれない買い」をした車両を使いたいがために無理矢理な設定をしてしまう。

*3:鉄道模型趣味の人にも色々いて、特定の時代の特定の番号の車両を再現することにこだわる人や、レイアウトを作ることにこだわる人などある程度流派がある。

*4:地方鉄道黎明期の車両は全体的に小さく、電車でも2軸車というものは珍しくない。

*5:現在、というより昔から、ある程度の大きさがある鉄道車両には路面電車等ごく一部の例外を除きこの台車がついていると考えてよく、みなさんが「電車の絵を描いてください」と言われた時に、車輪を両端に2つずつ描くのはこれのおかげである。