2023-08-01から1ヶ月間の記事一覧

きみの言い訳は最高の芸術

『きみの言い訳は最高の芸術』は単行本で出たときに電子で買ってそれきりだったのだけれど、丸善ジュンク堂で「最果タヒ書店」をやっているのを見て久しぶりに読み返したら、この本はもっと大切にしないといけない本だなと思って、文庫版のほうを書い直した。…

徳島8時26分発鳴門行き4954Dを巡る攻防(徳島紀行: 5)

ホテルの近くの喫茶店でモーニングを食べ、8時6分の鳴門行に間に合うように店を出た。しかし駅の案内表示を見てもどこにも8時6分という列車はない。次の鳴門行きは8時26分であり、その前は7時30分である。どうやら一体何を勘違いしていたのか、8時26分発を8…

一年でいちばん静かな日(徳島紀行: 4)

徳島の駅からしばらくまっすぐ歩いて、バス通りから1本入った商店街はみんなシャッターを閉めていて、人ひとり歩いていない。目当ての店もお盆の後から一週間ぐらい休みということでやっていなかった。2日前に阿波おどりが終わったばかり(ただし3日目は中止…

人は何故バーベキューをやりたがるのか

なんで人間はみんなあんなにバーベキューをやりたがるのだろう。それがずっと理解できない。駐車場探しに右往左往し、場所探しに右往左往する。実際食ってる時間より準備と片付けのほうが時間は長いし、出てくる肉はどうせスーパーの肉だ。それを家の台所よ…

夜行明けの喫茶店ではホットコーヒーを頼みたくなる(徳島紀行: 3)

結局なんだかよくわからないまま定刻通りに高松に着いた。これなら予定通り徳島行きの特急「うずしお5号」に乗り換えられる。「うずしお5号」なら徳島まで乗る予定でいたから、徳島までの自由席特急券を買う。もし「サンライズ瀬戸」が遅れて「うずしお5号」…

サンライズ瀬戸はギャンブルである。(徳島紀行: 2)

21時30分なのにまだ17時前の新幹線がいつ発車するかわからない東海道新幹線*1を横目に、もうホームに入ってきている「サンライズ瀬戸」に乗り込んだ。「何ライズ目だ?」という謎のフレーズを思いつく。調べないと「14ライズ目」だということもわからない。…

夏の風物詩、ドトールバリューくじ

夏の風物詩、ドトールバリューくじが今年も開催されている。 ドトールバリューくじはドトールバリューカードで一定額以上購入すると引けるくじであり、毎年8月と12月の2回、1ヶ月に渡って行われる。昼休みは飯を食べる時間ではなく、一人になる時間である私…

買わなかった万年筆の思い出(モンブラン146)

都内某所でモンブランのマイスターシュテュック ル・グラン146の新品が4万円で買えることがわかった。 定価10万円超の万年筆が6割引で買えるというのも魅力だったし、モンブランの万年筆は持ったことがなかったから、知っているメーカーが増えるということも…

上を向いたら自動ドアが開いた

最近自動ドアが反応してくれない。会社のビルから出るときに限らない。会社の近くのドトールも反応してくれない。ドトールのほうは一歩下がるとドアが開くことがあるのでセンサーと私の立ち位置の問題であり、自分の存在がこの世から消滅しかかっているとい…

そろそろ旅程を考えないといけない(徳島紀行: 1)

一ヶ月も前にホテルと寝台特急と飛行機だけ取って放置していた2泊3日の旅行の計画を、出発の3日前になってようやく立てようという気になった。 なんというかこういう必要なことをずっと後回しにしていたのが何かに似ていると思ったら転職の面接の準備だった…

音楽などまったく必要ない人間が13年も音楽していた

音楽評論家の吉田秀和は、カール・リヒターが指揮する『マタイ受難曲』を評して「この演奏のペテロの否認の場面で涙しない人がいたら、その人は音楽など全く必要のない人である」と書いた。私はその音源を聴いて幸いにも涙しなかったので、音楽は必要のない…

LINEやってない

LINEやってない。LINEというものが世に広まり出した頃、私は既に連絡を取り合う人というものが存在しなかった。家族とはメールのやりとりで十分だった。たまに合う友人はTwitterのDMで事足りた。 LINEというものが広がり出す少し前、AndroidからiPhoneへ機種…

絶望は未来の長さと釣り合っている

家に帰ってくると一回は明日休みだっけ、と思う。それが月曜でも火曜でも。それで明日も休みではないことを確認すると、また今日も生き残ったと思って、残りの一日を無為に過ごす。 院進したいと思っていたことを思い出した。自分が普通に会社や組織で働くと…

旅先に本は持っていかない

旅先に本は持っていかない。 旅先で本を読む、それは旅をするということではなく本を読むということだ。本を読むという環境を変えることでその本に対する印象が変わることに価値を見出すのなら、究極のところ読書という体験であって旅という体験ではない。読…

思い入れのある合唱曲というものが存在する

好きな合唱曲というか思い入れのある合唱曲の、その理由が「その曲を練習をしている時間が、10年間という合唱人生のなかで唯一、曲と向き合うという行為そのものが心から純粋に楽しいと思える瞬間だったから」というのと、「作曲家に委嘱して初演した曲だか…

昔はよかった

東海道新幹線のチャイムが7月から変わっていた。最後に東海道新幹線に乗ったのは今年の4月だったけど、そのときはJR西日本の車両だったので、変わる前のチャイムを最後に聴いたのは、その一年前のGW、倉敷からの帰りまでに遡る。 車内チャイムが「AMBITIOUS …

ボディーブローのように効いてくる

「あとからボディーブローのように効いてくる」という比喩があるけれど、ボディーブローを実際に受けたことがないので実はボディーブローがあとから効いてくるものだということがよくわかっていない。そもそもボディーブローが何なのかよくわかっていない。…

自分以外全員ピカチュウ

青色が足りない。そう思って酷暑日の外に飛び出した。横浜駅から山下公園まで、帽子も被らず、飲み物も持たずに歩いたから、多分そのうち死ぬ。夏の太陽が大好きで、別に37℃ぐらいなら何にも考えず夏の晴れた日に外に出てしまうのだけど、若いのは見た目だけ…

忘岬へ(忘埼灯台)

忘岬にある忘埼灯台*1は本土最南端の灯台である。海果諸島にもいくつか灯台があるから最南端ではないのだけど、中に入って登れる灯台としては最南端にあたる。 忘岬、ずいぶん詩的な響きのするこの場所に来ると立原道造の詩を一節を引かずにはいられない。 …

読んだ貴方が悪い

昨日と全く同じ感覚で目を覚ました。午前3時30分。 ――うん、「また」なんだ。済まない。 すなわち風呂に入らないまま寝落ちたということ。強化ガラスの向こう側は雪が積もった夜のように、かすかに白い。夏に釧路に泊まった時、午前4時30分にはもう完全に明…

自走客車

北海道に昔あった「簡易軌道」*1では、動力を持っていて客を乗せるための車両を「自走客車」というらしい*2。「自走客車」、いい響きだと思う。運転手という人間の存在なしに、自らの意思で走る。そんな響きがする。 たぶん世界のどこかには、そんな客車たち…

私たちは製品である

朝のラッシュ時の自動改札ってなんか工業製品が検品されて出荷されていくみたいだなと思う*1。満員電車で運ばれてきた製品が開いたドアから一斉に改札に向かって転がって行って、改札口という検品を通過した製品が仕分けられてそれぞれの会社まで何かの力に…

シュペルヴィエル『海に住む少女』(光文社古典新訳文庫)

18時過ぎに喫茶店に入った。ビルの地下1階にある、初めて入る店。18時過ぎというとだいたい喫茶店は空いてくる時間なのだけど、この店はほぼ満席で、入り口に近い席が1つだけ空いていたから、そこに通された。 コーヒーと、サンドイッチやスープやサラダのセ…

高校野球が好きになれない

日本人は高校野球を通じて野球ではなくて高校生に感動している。スポーツをやるのに適さないような暑い日に、高校生がその適さないスポーツを頑張っている姿が昔から全国的にテレビで中継されていて、それがたまたま野球だっただけに過ぎない。感動している…

XはTwitterではない

TwitterがXという名前になり、アイコンも青から黒いものに変わってから、ブラウザのお気に入りバーからTwitterに行こうとする時に一瞬迷うことが増えた。つまりお気に入りバーからTwitterに行こうとしている時、Twitterという名前を探しているのではなく、あ…

読書感覚文だったらよかった

「読書感想文」ではなくて「読書感覚文」ならどれほど夏休みの宿題は楽だっただろうか。今でも本を読み終わった後に感想が生じることなんてほとんどないから、たぶん今でも「読書感想文を書いてきなさい」と言われたら、だいぶ苦労すると思う。 でも読書の際…

卒業アルバムいらない派

大学に入って一番驚いたことは大学にも「卒業アルバム」という概念が存在することだった。「卒業アルバム用の写真撮影をしないと卒業アルバムに載りません」という掲示を大学各所で見たことがきっかけだったと思う。そのあと卒業アルバムは希望者だけが購入…

終わりの始まり

ドトールバリューくじ*1やほぼ日手帳の予告が始まった。 8月になると、なんとなく夏休みの終わりが始まった、という感覚になる。中学までは部活の大会が7月末だったらかもしれない。「夏休みが始まった!」という興奮も冷めてきて、学校に行かなくていい、と…

私がいいなと思ったものは全部撮影禁止だった

テート美術館展に行く元気はあった。大好きなハンマースホイが2枚も来ている。国内の美術館で所蔵するハンマースホイは2枚しかないから、それと同じだけのハンマースホイが来ている。それだけでも十分行く理由になるのだが、思ったよりも現代アートしていて…

「思い出すために」の話を思い出すために

今年はあまりまとまって夏休みが取れなさそうな気がした。だから久しぶりに鴎鉄道に乗ろうと思った。ここなら別にわざわざ連続して休みを取って泊まりに来なくてもいい。今日乗ったのは鴎が書かれていない、全体が水色の電車だった。特にどこで降りようか、…