一年でいちばん静かな日(徳島紀行: 4)

徳島の駅からしばらくまっすぐ歩いて、バス通りから1本入った商店街はみんなシャッターを閉めていて、人ひとり歩いていない。目当ての店もお盆の後から一週間ぐらい休みということでやっていなかった。2日前に阿波おどりが終わったばかり(ただし3日目は中止)だから、この街は「お盆休み」という概念が他の地域と多少ズレているのかもしれない。阿波おどりが終わった直後だからこうなのか、それともこれが平日昼間の正常な姿なのか、土日になれば人が出てくるのかはよくわからない。なんとなく虚脱感というか、虚無感というものが街全体から出ている。しかし、一年で一番徳島の街がおとなしい日に来たことはたしかである。

千葉の成田山の参道を、12月30日の夕方に歩いたことがある。夕方18時にはやはりどこも店を閉めていて、歩いている人もいない。成田の参道が賑わうのは翌日の夜からであるのは明らかであるから、12月30日が一年で一番静かな日だと思う。

そんな日でもちゃんと開いている喫茶店はある。そういう店は阿波おどりの日だけ夜遅くまでやっていて、あとの日は普通にやっているというような営業スタイルを取っている。目当ての店が全く開いていなかったから徳島の街をずっと彷徨っていて、気づいたらこの店に2時間近くも長居してしまっていて、もう16時30分になろうとしている。17時になると開いている施設といえば駅前の商業施設と阿波おどり会館ぐらいしかないし、雨は相変わらず降ったりやんだりで眉山に登る気にもなれない。

客は阿波おどりの話ばかりしている。「もうどんどん喧嘩しちゃえばいいのよ」なんて話をしている*1。先客は出ていくけど入ってくる客はいない。徳島の喫茶店はどこもだいたい18時ぐらいには閉まってしまう。

店を出る。駅前の商業施設やまだ行っていない商店街(こっちの商店街はシャッターが閉まっているというよりそもそも店が少ない)を探検していたらいつの間にか雨はやんでいて、眉山のほうには晴れ間があって太陽が顔を出している。「明日はきっといいことある歩道橋」という、じゃあ今日はいいことないんかい、という歩道橋を渡っていたら、晴れ間の反対側に虹がかかっているのが見えた。

*1:あまり地方政治には詳しくないが、徳島の市長はいつもどこかしらと揉めている印象がある