シュペルヴィエル『海に住む少女』(光文社古典新訳文庫)

18時過ぎに喫茶店に入った。ビルの地下1階にある、初めて入る店。18時過ぎというとだいたい喫茶店は空いてくる時間なのだけど、この店はほぼ満席で、入り口に近い席が1つだけ空いていたから、そこに通された。

コーヒーと、サンドイッチやスープやサラダのセットを頼んだら、「お時間少々頂戴しますが宜しいでしょうか?」と訊かれたので、構いません、と答える。

手帳を広げて、手帳にペンを走らせる。これができるなら、別に何分待たされても構わない。昔長崎の四海樓*1で1時間半並んだ時だって、ひたすらノートにペンを走らせていたのだ。

しばらく書いていて、ふとペンが止まったときに、さっき本屋でシュペルヴィエルの『海に住む少女』を買ったことを思い出して、冒頭の「海に住む少女」を読み始めた。そうしたらまもなく料理が出てきて、「おまたせして申し訳ございません」と言われたけど、時計を見たら15分ぐらいしか経っていなかった。

それからサンドイッチやサラダやスープを食べて、食べ終わる頃にコーヒーが運ばれてきた。店の中はようやく客が減り始めてきたようだった。コーヒーを飲みながら、また『海に住む少女』の続きを読んだ。

19時近くなった。確かGoogleマップ上では19時閉店ということになっていたので、散らかっていた身の回りのものを片付けようとしたら、ちょうど料理の皿を店員さんが下げに来て、「まだ全然閉店じゃないので大丈夫ですよ」と言った。それに甘えることにして、読み進めることにした。

あともう少しで読み終わるようなときに、お冷を飲もうとふと本から目を外すと、あんなにたくさんいた客は誰もいなくなっていて、新たに入ってきた客もいない。キッチンのほうも、なんだか後片付けに入っているような雰囲気がしている。本の内容が内容なので、このままこの店にいたら、永遠に外の世界から切り離されてこの店に閉じ込められそうな気がしてきた。それでキリのいいところで本を読むのをやめて、この店を出ることにした。

*1:ちゃんぽん発祥の店といわれる超有名店。そんな店にGWに突っ込むという無謀なことをした