サンライズ瀬戸はギャンブルである。(徳島紀行: 2)

21時30分なのにまだ17時前の新幹線がいつ発車するかわからない東海道新幹線*1を横目に、もうホームに入ってきている「サンライズ瀬戸」に乗り込んだ。「何ライズ目だ?」という謎のフレーズを思いつく。調べないと「14ライズ目」だということもわからない。それぐらい「サンライズ瀬戸・出雲」には乗っている。今日の部屋は進行方向左側のシングル*2という個室になっているのだが、この進行方向左側、すなわち海側の個室に当たるのは相当久しぶりで、いつもはシングルを予約すると一階の山側の個室を引く。ノビノビ座席*3やシングルデラックスは海側にしかないから乗れば必ず海側にあたるのだが、海側も山側もあるシングルで海側を引くのは相当珍しい。しかし今回はやはり一階の部屋で、二階を引いたのは2回しかない。その両方とも山側だから、シングルの二階の海側には14ライズ中一度も乗ったことがない。シングルの2階海側という個室が最早実在するのかも怪しい。旅行会社とかが最初から抑えているのかもしれない。

台風の影響で昨日も一昨日も運休していたから一日ズレていたら動いていなかったことになる。ただ別に台風が来なくても旅行の行きを「サンライズ瀬戸・出雲」にするのはなかなかギャンブルであることは前にも書いた。台風が過ぎ去っても、前の日に「サンライズ瀬戸」が運休して東京に辿り着けない、ということがなくても*4、夕方に東海道線で人身事故が起これば終わりである。先日の架線柱の事故の日は東京駅のホームに来られただけマシで*5、そもそも車庫から出られなかったこともある。実は今日の昼、静岡県内の倒木で東海道本線も止まっていて、これはひょっとしたら動かないかもしれないと思って明日の朝の飛行機の予約だけしていた。夕方には運転を再開していたから、余計な取消料やキャンセル料を取られずに済んだ。とにかく、乗車当日の発車時刻にならなければ、どうなるかわからない列車なのである。

サンライズ瀬戸・出雲」の個室寝台はベッドが線路と平行になるように設置されている。普通の電車で言えば通勤電車のようなロングシートで、窓の外を見る時はベッドの上であぐらをかいたり体育座りをするか、子供が電車の窓から外を見るような姿勢を取る必要がある。やれ靴を脱げだの何だの色々言われて取った姿勢を、この列車の中では個室という誰の目も気にしなくて良い場所で取ることができる。「サンライズ瀬戸・出雲」は、子供の頃に帰れる列車だと思う。

いつもは小田原を過ぎておやすみ放送が流れたら洗面台に行き、歯を磨きながら窓の外に見える相模湾を眺める。自分の部屋からだと見えないからである。しかし今日は自分の部屋から相模湾が見えるので、熱海についてから歯を磨いて、あとはいつもと同じように丹那トンネルを抜けて沼津に着いてから電気を消した。

寝台で横になろうがただの座席だろうが、夜行の乗り物に乗るといつまで経っても眠れず、数時間おきに目を覚ましたりして、果たして眠ったのか眠らないのかよくわからないまま目的地に着く。「サンライズ瀬戸」でもそれは例外ではなく、寝付けないまま浜松に着いたり、乗務員交代のために停車する米原や、大阪のあたり、それに夜明け前に止まる姫路のあたりでいつも目を覚ますのだが、今回は抗不安剤抗うつ剤を飲んでいるので、全くそんなことはなく岡山の案内放送で目を覚ました。静岡県内でダイヤが乱れていたので、遅れている普通列車が前を塞いで少し遅れるかもしれない、と思ったけど、全くそんな事はなく定刻通りに走っているという。

それにしても眠れる薬というのは偉大である。今度はこれを飲んで夜行バスに乗ってみたいと思ったが、その前に病気を早く治せとすぐに思った。

*1:この日、台風通過後の静岡県内での大雨で東海道新幹線は終日無ダイヤ状態だった。

*2:個室寝台の種類。安い順にソロ、シングル、シングルツイン、サンライズツイン、シングルデラックスの5種類があり、この「シングル」の部屋数が最も多い。

*3:いわゆるカーペット席。「寝台」ではないので指定席特急券だけで利用できるため、少しでも旅費を浮かせたい層には重宝されている。

*4:事実、この日走る予定だった臨時の「サンライズ出雲」は、前日走る予定だった東京行きの臨時「サンライズ出雲」が運休して東京に来られなかったという理由で運休となっていた。

*5:この日は東京駅で客を乗せたまま一晩を明かした挙げ句、翌朝になって運休と決まった。