貴方の好きな法律はなんですか。

好きな法律は何かと訊かれたときのために「国民の祝日に関する法律」という答えを準備しているが、まだ一度も訊かれたことがない。このたった三条しかない法律の、第一条が素晴らしいので全文を引用する。

第一条 自由と平和を求めてやまない日本国民は、美しい風習を育てつつ、よりよき社会、より豊かな生活を築きあげるために、ここに国民こぞつて祝い、感謝し、又は記念する日を定め、これを「国民の祝日」と名づける。

これほどまでに「喜び」みたいなものがひしひしと伝わってくる条文が、日本におよそ2000ぐらいあるという法律のなかにあるだろうか。どこで切ってもプラスのニュアンスの言葉しか連なっていない。書いた人、よっぽど嬉しかったんだろうな。「こぞつて」がまたいい。揶揄のニュアンスを込めずに「こぞって」という単語を使用する機会がどれほどあるか。「もろびとこぞりて」以来ではないのか。

たぶん条文の本文に「日本国民」という単語が出てくる法律も珍しい。出てくるとしたら「前文」などの、この法律を定めるにあたっての決意表明みたいなところが多いのだが、この法律は条文の本文に出てきている。三条しかないから前文なんか書くまでもなかったのかもしれない。

第二条は各休日の意義が書かれているのだが、読んでいると色々な発見がある。建国記念日だけは「政令で定める日」になっているし、文化の日は「自由と平和を愛し、文化をすすめる。」と、相当頑張ったんだろうなあというのが伺える。ちなみにこのあたりのことは内閣府のウェブサイトに詳しい。

最後の第三条も味わい深いので、第一項を引用する。

第三条 「国民の祝日」は、休日とする。