何が「帆船」かはちゃんと法律で定義されている

国立科学博物館の「海 生命のみなもと」展で一番印象に残ったのは最新のテクノロジーを結集させて作った「帆船」だった。どうしたら化石燃料の使用を減らせるか考えた結果、行き着いた先が古代エジプトの時代から使われていた帆の技術だった、というのが感慨深い。

ところが「帆船」とは船舶法施行細則の第1条にちゃんと定められており、

主トシテ帆ヲ以テ運航スル装置ヲ有スル船舶ハ機関ヲ有スルモノト雖モ之ヲ帆船ト看做ス

つまりあくまでも主として帆を以て運航する船でなければ帆船とは呼ばれないのである。ここで紹介されている船は主としては燃料で動く船であって風力は補助動力なので、どこまで行っても法律上は「汽船」である。

しかしこの船舶法施行細則は、「帆船」の定義はなされているが、「帆」の定義がなされていない。どこかに定義されているのかもしれない。海事法に触ったことがないのでわからない。正式には硬翼帆式風力推進装置というこの装置、繊維強化プラスチックというものでできているらしい。じゃあ結局みんなの大好きなプラスチック使っとるやんけという突っ込みはなしとして、ここまで来ると帆で動いているのか内燃機関で動いているのか判別がつかない船が出てくる可能性があり、帆を定義させる必要を生じるようなそういう船を見てみたい気がする。

メガマウスザメの標本に見覚えがあったので説明を見たらやはり油壷のもので、閉館後科博に寄贈されていたようだった。油壷でも天井から吊るされて展示されていたメガマウスザメは今回も天井から吊るされて展示されている。今回は深海がメインではないのでダイオウイカはいなかったが、常設展のほうに普通に置かれていた。10年前の深海展のときは行列になって立ち止まらずに見たダイオウイカを見ている人は誰もいなかった。