酒は飲めないということにしておこう

昨年やめたことに酒があって、年始に実家から戻ってきてから酒を飲んだのは祖母の通夜の1度しかない。外泊先で居酒屋に行くということもしなかった。私はアルコールの味がすこぶる苦手で、梅酒とかカシスとかそういう甘ったるい酒しか飲めない。それに酒を飲んだところで嫌なことが忘れられる訳でもないし、気分が晴れる訳でもない(気分が元から晴れている訳では決してない)。飲んだところで大したメリットはないのにそれに合わせた料理を作るのがまあまあ面倒くさい。だったらまだ夕飯自体は茹でておいた鶏むね肉を薄くスライスしたものに麵つゆをかけたものと、トマトとレタスのサラダだけなどにして適当に済ませて、残った時間で青葉市子でも聴いているか、ハンマースホイ*1あたりの画集でも眺めているほうがよほど精神衛生にはいい。

酒が飲めない人の人権はここ15年ぐらいでだいぶ保障されるようになってきた印象があるが、酒の味が嫌いな人への人権は残念ながら保障されているとは言い難い。「飲めない訳ではない」と言ってしまったが最後、「飲めないんじゃないんだから」と言われて好きでもない酒を飲まされる運命である。一律に「体質上酒は飲めません」ということにしておいたほうが周りの印象を悪くしなくて万事うまくいく。

*1:デンマークの画家。ハマスホイとも書く。生涯に渡ってモノトーンの「静かな」絵を描き続けたため、刺激がたいへん少ない。