特急「剣山」の指定席(徳島紀行: 8)

徳島9時ちょうど発の特急「剣山3号」*1も2両編成である。時刻表巻末の編成表を見ると1号車の半分が指定席のように見えるが、指定席は半分もなく、15列60席あるうちの4列、16席しかない。残りは全て自由席で、その自由席に乗っている客もせいぜい7~8人ぐらいしかいない。こういう列車で指定席を取ってしまうのは、そういう事情を知らずに初めて「剣山」に乗るなどしている人で、そういう感じを醸し出している親子連れが指定席に乗っている。なぜそういうことを書くかというと、かつての自分も全くその通りだったからで、わざわざ指定席を取ったうえに間違えて吉野川が見えない側の席を取るという全くもって阿呆なことをした。

今日は自由席で、ちゃんと進行方向右側の吉野川が見える席に座る。徳島本線は吉野川に沿って上流の阿波池田(正確にはその一つ手前の佃)まで走る路線で、吉野川を渡ることなくずっとその右岸を走る。石井、蔵本と走っていくと集合住宅などが目立ち、昨日佐古から乗ってくる高校生がたくさんいたのもなんとなく納得がいく。このあたりのほうが徳島駅やその南側より沿線人口は多いのだろう。

ただ吉野川が車窓にちゃんと現れるのは穴吹の手前で、私はその穴吹で降りてしまう。調べてみたらあのうだつで有名な脇町までは歩いて30分ぐらいもかかり、思っていたより遠い。今日は晴れていて32℃ある。都会が暑いのに慣れ過ぎて32℃しかないじゃねえかと思うが、32℃は「しか」ではなく「も」である。その中を30分ぐらい歩く。駅前にタクシーがいたら乗ってしまおうかと思ったが、たぶん呼ばないと来ない奴なのでいなかった。呼ぶぐらいなら歩こうと思う。このクソ暑い中、暑いと言いながら、真夏の太陽の下で30分(往復なので実質1時間)ぐらい歩く、それが私の夏だ。そうでもしなければ夏ではない。それで死ねば本望だ。

30分ほど吉野川に沿って歩き、ついに辿り着いた脇町の街並みは割と観光地として大々的に載っているのに、休日なのにほとんど人がいなかった。道の駅で藍染めの体験ができるほか、藍商の吉田家住宅と、何軒かの土産物屋とカフェぐらいしかないにも関わらず、数少ない飲食店である蕎麦屋は休業している。土産屋はだいたい藍染の商品を売っている。もっと人通りがあるものだと思ったが、昼飯を食べ終えて、午後になっても人は増えない。こういうところにあるおしゃれな雑貨屋は、概して東京でも買えるものを売っていたりする。

*1:「つるぎさん」と読む。念のため。