どうせ定時まで帰さぬつもり

アニメなどでご存じの方も多いかと思うが日本の軍歌に『雪の進軍』というものがある。名にし負う大日本帝国時代の軍歌とは到底思えない能天気なメロディと歌詞は、雪中行軍(作者は日清戦争の様子を曲にしたらしい)の兵士の苦労を愚痴ったものである。現代で言えばまさに大雪で列車が止まるというのに出社を余儀なくされているサラリーマンそのものである。「どうし生かして還さぬつもり」ではないが「どうせ定時までは還さぬつもり」である。

「業務に支障がない範囲で調整のうえ」なんて言うのだが物理的にオフィスが存在する以上それを管理する部署の人間はオフィスに最低一人存在しないとそもそも会社の業務に支障が出る。大雪だろうが台風だろうがオフィスというものが物理的に存在する限り始業時刻にはオフィスにいなければならないのであり、雨が降ろうが槍が降ろうが朝から晩までオフィスでワッショイワッショイしていなければならない。会社で管理しているソフトと営業が勝手に入れているソフト(社内規程を厳密に適用すれば就業規則違反である)の区別もつかない社員を相手にパソコンメーカーのコールセンターみたいな仕事をし、プロバイダの障害によるネットワーク遅延に対して文句を言われ、彼らが「ご家庭の事情もあるしね」という後ろ盾を得て帰っていた後、私はようやく今日の自分の仕事を始めるのである。

だから私が急に「やーめた」と言い出したらさぞ面白かろうと思うのだが、肝心の私が辞めたところで何をしたいというのがないし、転職活動があまりにも面倒くさすぎて鬱病まで発症してしまうことが判明したので現状どうしようもない。どうせ明日も「大雪だから出なくていい」なんてことは絶対にない。「行かない」という選択肢などない。退く戦術を知らず、肉弾届くところまで前進前進また前進し、散兵線の花と散るしか無い悲しき大和男子である。