なにも食べたくない

「三度の飯より……」という言葉があるけれど、三度の飯があまり好きでない。

昔は単に面倒くさかった。まず最初に片付けが面倒になり、次に考えるのが面倒になり、作るのが面倒になって最後には食べるのが面倒になる。

しかし、最近はどうも「食べるという行為それ自体が面倒くさい」のではなくて「食べるという行為が嫌」という、食事に対する積極的な否定の感情に変わってきたような気がする。帰りの電車の中で今日食べようと思う食べ物の味を思い出すとそれだけでもう食べたくないや、と思うし、スーパーやコンビニの惣菜コーナーに行っても特に食べたいと思うものはなく、じゃあ自分で作れば解決するかというとそういう問題でもない。そもそも自分で何かを作るという気力が既に残っていない。

しかも、ただ空腹を満たすためになんとかこの味なら食べられそうだと、頭に思い浮かんだ何かを食べていればいいだけではなく、人の体には栄養というものが必要で、これを考えなければならないのが面倒くささや食事に対する嫌悪感に拍車をかけている。これだけを食べていれば栄養のことは何も考えなくていいというカロリーメイトみたいな食品が存在すれば、人生の残りの食事すべてそれでも構わない、とさえ思っていた。

そういうことを考えていたら日清食品が「完全メシ」というまさにそういうものを既に発売していたので、それを買ってみた。しかし外側は「完全メシ」を謳っているが中身は「ラ王」とか「カレーメシ」である。従ってどこまで行ってもこれはインスタント食品であり、3食こればかり食べているとたしかに栄養は完璧かもしれないが、どう考えてもそうではない別の問題が生じる。他にこのシリーズで出ているのはスムージーとかシリアルしかなく、その量はどう見ても「一食」ではない。食事に何も思考を使わなくてよくなるまでもう少し時間がかかりそうである。