草野心平「なにがクリスマスだ」

草野心平に「なにがクリスマスだ」という詩があるが、「初めて他人の血が混ざる」と、おそらく初めて輸血されることを半ばヤケになって嘆いた詩であって、別に一緒に過ごす相手のいない独り身を嘆いた詩ではない。嘆く次元が違うのである。

クリスマス前後の夜に渋谷や表参道や水族館といったどう考えても物見遊山目的のカップルしかいないだろう、というところにふらふらとでかけていくのは大好きなステッカー屋であるところのビーサイドレーベルがこの時期に感謝祭をやるからであって私のせいではない。でも別にクリスマス・イブの夜を一人で歩いてはいけないという法律はないし(緊急事態宣言の頃に散々聞いた言説だ)、別に一人でいることが普通なのだから取り立てて一人であることを強調することもない。新宿に行って模型屋と本屋に行った後、渋谷でビーサイドレーベルの感謝祭でバカみたいにシールを買い込んだ後、「青の洞窟」をたぶん一番混む日に見に行った、ただそれだけである。それをわざわざ「一人で」とか「ぼっちで」を強調して動画にしてYoutubeVlogとして上げる人は友達欲しさにぼっちを楽しんでいるふりをしているという二面性を持つ。本当に一人がいいなら別にひとりであることを強調せずにただ出かけてきたことだけを報告する。

それにしても新宿は飯屋がイマイチだ。丸の内も大概だが、新宿もない。「丸の内OL」がある種のブランドみたいな響きを持っていると思い込んでいる層がおそらく存在するから、丸の内がそういう人たちに向けた店ばかりなのはなんとなく理解できるが、新宿は理解できない。ただデカいビルが立ち並んでいるだけで別に洗練されている感じもしないし、西口は飲み屋しかない。まだ徒歩3分圏内にドトールが3つとベローチェが1つある神保町や、ドトールベローチェが1つずつある岩本町とかのほうがマシである。