先生、図録は読書に入りますか

『名画を見る眼』『近代絵画史』『20世紀美術』『日本美術を見る眼』と高階秀爾氏の本を今年だけで6冊(前2冊は上下巻である)も読んだのだが、読んでみて思ったのは高階秀爾史観みたいなものが日本にはあるのかもしれないということである、というか、「山田五郎オトナの教養講座」はこの高階秀爾史観みたいなものを基にしているのではないかということである。

『20世紀美術』は今年読んだ本のなかで一番おもしろかった。決して現代美術の入門書ではなく、セザンヌ以降の美術について一通りさらった後に読む本である。これを西洋美術館のキュビスム展の前後に読んだら大変おもしろかった。読書は趣味ではないので新刊を読むということはあまりしないから、今年出た本でと言われると困るのだが、今年は珍しく今年出た本を沢山買った。しかしよくよく思い返してみると今年出た本は『青の図鑑』だの『色の物語 青』だの『イラストレーターのための現代ファッション大図鑑』だの要するに図鑑ものばかりを買っていた。だから年末の書評にありがちな「ことし出た本のベスト」のような記事を書くことは未来永劫できない。

しかしながら西洋美術館の「ピカソとその時代」「キュビスム展」アーティゾン美術館「ABSTRACTION」の図録を買っている。図録は「読書」に入るのか、という問題があるが、ISBNが乗って書店流通した図録は読書に入れていいのではないかと思うが、残念ながらどれもISBNは入っていない。でも、たぶん「今年の展覧会」みたいな記事は書くことはできる。そういう記事が上がったら、「ああ書くことがなかったんだな」と思っていただけると思う。