好きなのかもしれない(広島紀行: 1)

出発の日が近づくたびに、「なんで旅行なんて行こうと思ったのか」という後悔の念に駆られる。やるべきこと、食べるもの、その他いろいろの考えなければいけないことの多さに。でもどこか遠くへ行って何ヶ月もすれば「最近どこにも行っていないな」と思ってホテルと飛行機を予約してしまう。事実、まだ行ってさえもいないのに、既にゴールデンウィークの飛行機とホテルだけを抑えている。おそらく4月頃、また同じ苦しみを味わうだろう、そして帰ってきてから、今度は夏休みの予定を考え始めるだろう。

とうとう運命は星になる夢でもなかった、花になる夢でもなかった。青いランプをともしたいとねがう僕には、放浪癖はやはりなかったのだと思う。(中略)宇宙的なさすらいや大いなる遠征よりも、宇宙の自分のうちにきずくこと。せまい周囲に光を集注すること、それが僕の本道だとおもう。
立原道造『長崎紀行』)

ずっと旅は好きだと思ってきた。でもそれは「日本の鉄道に全部乗るための」という留保がついたもので、それを成し遂げてしまってからは、別にそうでもないようにも思う。ただ、それを好きでやっていた時期というの確実に存在して、趣味というものは結局永遠不変のものではないということだろう。今はみんなが思っているより旅も鉄道もそれほど好きではない。でも年に2~3回も旅行をしていたら、それは「好き」の部類に入るのだろうか。

なんで旅行になんて行こうと思ったのか、自問すると結局取らなければいけない休みを取らなくてはいけなくて、連続して休みが取れるのにどこにも行かないのが勿体ないと思ってしまったからである。だからやっぱり好きなのかもしれない。広島か山口に行こうと思って、山口はゴールデンウィークにまわして広島に行くことにした。そうすれば平日に宮島に行ける。それにマリホ水族館は今年の末で閉館するという。海遊館にも久しぶりに行きたいけど、大阪は来年北大阪急行が伸びてから行けばいいし、まだあまりゆっくりしたことのない函館はまだ寒い。広島にはまだ乗ったことがない観光列車が残っている。そしてたぶん、尾道にも寄れる。