創作上における「世界」を作るのではないのだけど

ネルソン・グッドマンの『世界制作の方法』という本を読んでいる。物語のようなものを書いていた頃タイトルに惹かれて買いそうになったことがあるのだが、背表紙の概要を読んだらどうも創作上の世界を作るのではなくこの世界の認識に関する本、即ち哲学の本だということらしいことがわかったのでやめた記憶がある。しかし『死にいたる病』や『存在と時間』は読もうと思うのだから人間はわからない。

それをまさか10ウン年も経ってから読むことになるとは思わなかった。要するに世界は存在するのではなく制作されるのであるという本(多分)である。

世界制作は、部分や要素や下位集合から全体や種を構成すること、特徴を結合して複合体にすること、さまざまな結合をもたらすことから成っている。(28P)

グッドマンの主張のいち部分に過ぎないのではあるが、この部分がなんとなく「データベース消費」を想起せずにはいられない。前述のとおり私は昔物語のようなものを書いていたので大塚英志の『キャラクター小説の作り方』(講談社現代新書)が生まれて初めて買った新書*1で、その後で東浩紀の『動物化するポストモダン』(講談社現代新書)を読んだので、「キャラクターとは既存の要素の組み合わせである」という『キャラクター小説の作り方』の記述がその時初めて理解できたという歪んだ人生を送っている。

ちなみに私は『動物化するポストモダン』より先に『ゲーム的リアリズムの誕生』(講談社現代新書)を読んでいるという更に歪んだ人生を送っている。『ゲーム的リアリズムの誕生』がブックオフで安くなっていたのと、『動物化するポストモダン』の重要性を大学に入ったばかりの自分はまだそれほど理解していなかったからである。

それにしても『境界の美術史』を読み終えたらちょうど電子書籍になったのに対し、『世界制作の方法』は15年経っても電子書籍にならない。権利が面倒くさいのかもしれない。紙の発売とほぼ同時に電子書籍になるものもあれば、『境界の美術史』みたいに半年ぐらいで電子書籍になるものもあれば、『読んでいない本について堂々と語る方法』みたいに何年も経って電子になるものもあれば、本書のように15年経っても電子にならないものもある。ちくま文庫は難しい。

*1:星海社新書版(2013年)ではない。