コレクション展の季節(広島紀行: 6)

広島に行くならひろしま美術館にも行きたかった。それで調べたらちょうど特別展が終わったあとで、コレクション企画展というものが始まる前でコレクション展示、要するに常設展しかやっていない。特別展をやっているのも良し悪しで、それが巡回展で東京でもやっていたもの、更にそれが自分が東京で観に行ったものだと何のためにわざわざ遠出してきたのかということになりかねない。だから常設展だけでも見せてくれ、閉館でないだけまだいいと思わなければならない。

ひろしま美術館は「ピカソ 青の時代を超えて」とか「印象派、記憶への旅」などポーラと巡回し合ったりしている展覧会があり、印象派からエコール・ド・パリまでの特にフランス絵画が強いイメージがあるため、「西のポーラ美術館」という第一印象があり、たぶん事実そうである。コレクション展示はそれで包含できる絵画が約100点ほど展示されているが、エコール・ド・パリから先がほぼないため刺激が少なく、大変眼に優しいコレクションとなっている。しかし日曜の真っ昼間なのに信じられないぐらい空いている。旅人にとっては新鮮な常設展でも、地元の常連さんにとっては常設だけ見ても、という感じなのかもしれない。

ルノワールの《パリスの審判》は2年前にアーティゾン美術館で見た時はたしか撮影禁止だったと思うのだが、ここでは撮影可能だった。何が違うのか。

思ったより早くひろしま美術館を見終えたので、広島県立美術館まで歩いた。広島県立美術館も「美術館のプロフィール-収集の軌跡/新収蔵作品展」、つまりコレクション展示をしている。そういう季節なのかもしれない。はっきり言って「ついで」というか「時間つぶし」で行ったのだが、こう言っちゃ失礼なんだけど思ったよりも面白かった。展示されている日本人以外の画家がダリにマグリットにピカビアにニコルソンといったメンツであり刺激が強い。日本人は広島ゆかりの画家を中心に近現代日本画、近代洋画に現代美術、現代彫刻などを網羅し、彫刻・工芸なども収蔵。特に面白かったのが児玉希望というほぼ抽象画となっている日本画たちで、広島県立美術館の所蔵作品検索で「吾妻橋」とか「踊」と検索していただきたい。もうひとつは宮永理吉の《天空の森》という得体のしれない形をした磁器なのだが、これは館内撮影禁止なうえ画像もどこにもないので実際に観に行って頂く他ない。

この美術館がすごいと思ったのは主要なアーティストについては1人につき1冊、その人の人生を簡単にまとめたパンフレットを作っているほか、主要な作品にはA6ぐらいのサイズの解説チラシを作っておいてあるところである。これがよくできていて、ぐるりと見終わってから下のカフェでコーヒーと縄文アイス古代米味という謎のアイスを食べながら、鑑賞の復習をするのにもってこいである。しかしさすがに公立美術館とあって図録以外のオリジナルのグッズというのがあまりない。「広島県立美術館コレクションガイド」というコレクションダイジェストの本は買おうか本気で迷った。

本当にそんなに期待していなかったのと後用があったのでいつもの鑑賞よりだいぶ足早に見てしまったのが残念だったと思えるぐらいの展示だった。