人物画にこめられた思い@ふくやま美術館(広島紀行: 3)
駅でコインロッカーを使うと金を取られるが、美術館に入ってコインロッカーを使えば金がかからない、ということに気がついた時は天才の思いつきだなと思ったのだが、ふくやま美術館に入ったらコインロッカーが見当たらない。後でパンフレットを見返したらコインロッカーらしきマークはあるのだが、そこには傘立てしかなかった記憶しかない。
福山に寄るか尾道に寄るか迷って、福山にした。尾道を歩くほど時間がないのと、尾道市立美術館が展示替えで休館だったというのもある。その一方でふくやま美術館は開いているが、いわゆるコレクションの展示であって企画展ではない。企画展の類でない日に行くメリットはとにかく空いているということである。土曜の昼間なのにガラガラである。あともっともらしい理由をつけるとその美術館がどういうものを中心にコレクションしているかというのがおぼろげながらに見えてくる、というのもあり、特に地方の美術館は必ずその土地ゆかりの芸術家を集めているはずなので、コレクション展示のほうがその土地を感じられるという利点がある。森戸果香や福田恵一や藤井松山、藤井松林という画家の名前を初めて知った。森戸果香は伴大納言絵詞の模本を作っていて、それがちょうどこないだの「やまと絵展」で見た場面と全く同じ場面が展示されており「あっ、これ進研ゼミでやったところだ!」と思わずにはいられなかった。
それ以外には結構イタリア近現代画家が出てくるという印象である。近現代の日本人西洋画は岸田劉生、藤田嗣治、小磯良平、恩地孝四郎あたりを抑えていて、それを数百円で見られるというのが羨ましい。あと、入るときにもらえる作品解説が詳しくてありがたかった。
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同じチケットで同じフロアにある「ふくやま書道美術館」も見られる。明治期に日本における「美術」概念が移入されるによって書が軽視されるようになったその影響で私もそれほど書には詳しくない。しかし書道美術館には書画も展示されているから、全く見るものがないわけではない。展示されていたのは呉昌碩という「清朝最後の文人」と呼ばれた人の作品だった。制作年代を見ると20世紀であり、たしかに20世紀に書画というイメージはない。
美術館の1階にカフェがあり、コーヒーと瀬戸内レモンのヨーグルトケーキを食べる。席はちょうど福山城のほうを向いている。ハンバーグやカレーのランチもあって、昼食にも使える。そして何より空いている。