昨日はどこにもありません

この時期に「真冬並みの寒さでしょう」と言われるたびに「12月から3月はずっと真冬だろ馬鹿野郎」と思う。「真冬並み」というのは真冬じゃない時期に真冬みたいない寒さだから真冬並みなのであって、12月から3月は真冬だから真冬の寒さが当たり前であって「真冬並み」ではない。

それにしても昨日暖かかったのが嘘のようだ。でも昨日暖かかったことなんてもう忘れてしまった。今日目の前にはただ冬の寒さしか無い。昨日暖かかったのは昨日のこと、今日のことではありません。昨日はどこにもありません。それは今日のスリッパです。

一応史学科で学位を得ている人間なので「この時期では◯◯年ぶりの猛暑日です」と言われるのも違和感がある。「猛暑日」という語が使われ始めたのは2007年4月1日からなので、「30年ぶりの猛暑日」というのは存在しない。ただ35℃以上の「真夏日」だっただけだ。屁理屈を言うようだけど、現在のものの見方で過去を見ている典型的な例だと思う。

過去を見る時は過去のものの見方で考えろ、北条政子は「演説」なんてしていない、と高校の日本史の先生に言われた。やたらテストが簡単だったり、定期テストの答えにサッカー選手の名前を書かせたり「理想は社会民主主義」と堂々と言い放ったり(ただし日本共産党はダメだとも言っていた)、左翼的な言動や言葉遣いが「おもしろ先生」として消費されていた先生だったけど、大学で史学科に入った後の、歴史というものへの向き合い方みたいなものは、案外この先生から影響を受けているのではないかなという気もする。思想的な部分では全く受けていないけど。