村上隆もののけ京都

都美のモネと京都市美の村上隆を天秤にかけて、よく考えないままふわっと京都まで行ってしまった。2月頭から始まり、9月頭まで半年近くもやっている長い会期のせいなのか、作品の一部が未完成のまま始まっている。だから同じ作品を見ているはずなのに、展覧会に行った時期によって目の前にいる作品の完成度が違う状態でいる、ということになる。展覧会、いや作品を見るという行為を改めて問い直している。「展示替え」とも違う、会期を経るごとに展覧会自身が完成していくという「時間」の概念を展覧会に持ち込んだと言えば、随所にちりばめられた作家の「言い訳」を好意的に解釈したと言っていいだろうか。

岩佐又兵衛尾形光琳曾我蕭白風神雷神図、それに京都市内の文化財を下敷きにしていると明言してくれているのでこの作家はやさしい。そして、ちゃんとこういうものの流れが日本にあるということを勉強しなさいと言っているようでもある。幸い本阿弥光悦展を見てようやく琳派について勉強しようと思ったところなので琳派についての本は既に3~4冊積んである。いま『現代アート10講』(武蔵野美術大学出版局)という本を読んでいるので、これが終わったら読むことになろう。

ひとつなるほどと思ったのは「トレーディングカードの価値はカード自体のレア度に左右されるので、絵の良し悪しに関係される訳ではない」というコメントである。トレーディングカードのイラストみたいな絵が展示されていて、この絵をもとに昨年12月に本当にトレーディングカードゲームが発売されたものである。原作のアニメやマンガ、ゲームといったものはなく、単純に村上隆のNFT作品の「108 Flowers」が元ネタなので、単純にレア度だけで価値が決まるのだろう。

好みの作品がたくさんあったのだがグッズが高い。ダブルポケットのクリアファイルが900円するのはいいとして、「いいな」と思った作品がポストカードではなくてデカめのアートカードとして売られている。《琳派のお花と抽象的図像》はA5サイズギリギリだし、「金色の空の夏のお花畑」にいたっては幅がA4のタテと同じぐらいある。しかしこれがアーティストへの支援につながるのなら、悪い話ではないと言い聞かせてたくさん買った。図録は売られていない。「展示風景掲載のため」とあるが、まだ作品が完成していないのだから仕方がない。