本物はこないだ東京で見ましたよ(広島紀行: 8)

5年ぶりに宮島に行った。その時は宮島に行くためというよりは宮島のフェリーに乗るために行ったので、宮島に着いてすぐ帰ってきた。それ以来の宮島だった。この5年の間に広電の宮島口駅もフェリーターミナルも新しくなっていて、そして宮島の上陸に税金が取られるようになっている。前回は広電で宮島口に行ってJRのフェリーで宮島に向かったのだが、今回はJRで宮島口まで行って、広電グループの宮島松大汽船で宮島に向かう。

目的はもちろん「みやじマリン」こと宮島水族館に行くためである。月曜の朝イチで向かったら人が誰もいなかった。厳島神社も相当人が少なかったが、宮島水族館はもっと少なかった。だからテッポウウオのパフォーマンスを最前列で見られたり、ペンギンの写真撮影タイムで写真が取り放題だったり、ゴマフアザラシの背中を何度もさわれたりする。イルカに触れるところはまあまああるけれど、ゴマフアザラシに触らせてくれるところは珍しいと思う。しかしともかく次から次へとイベントの嵐で休ませてくれない。

大水槽はやたらとエイの割合が高い。アカエイがいてナルトビエイがいてマダラトビエイがいてマダラエイがいる。カキの養殖場を再現した水槽が面白い。スナメリがいてオットセイがいてトドがいる。しかし人はいない。

今日は全般的に人がいないのかもしれない。宮島に並ぶ店は「都合によりお休みします」という店がいくつも並んでいる。素直に定休日という店もあるが、なぜか「都合により」という理由で休んでいる。一体なぜこんなにたくさんの店が「都合により」休むのか。

昼食の時間をずらすために先に厳島神社に行った。参拝するとあの鳥居をバックに写真を取れるフォトスポットがあり、記念撮影をしようとする人が列を作っている。兼六園でも同じような光景を見た。琴柱灯籠をバックに写真を取れる場所に列をなす人。やることはどこでも同じだ。ここで写真を取ってくださいという場所で写真を撮り、お守りを買ったり御朱印をもらったりして、結局どうして厳島神社世界遺産なのかわからないまま、参拝路を後にする。

参拝路を出たところに宝物館がある。こちらは厳島神社に訪問する人の10分の1も行かないだろうところであるが、献上品や収蔵品の一部を展示している。国宝の平家納経は模本のほうが展示されている。「あっ、これ進研ゼミでやったところだ!」をまたやるとは思わなかった。近くで見ていた客が係の人と「これは複製品で、本物は年1度ぐらいだけ出しているんです」という話をしている。その本物ならこないだ東京で見ましたよ、と言おうとしてやめた。チケット売り場で平家納経の一筆箋が売られていたので買った。「やまと絵展」で一番気に入ったのが平家納経だったのだけど、「やまと絵展」では売られていなかった平家納経のグッズをようやく買えた。